2025年11月29日

湘夢遺稿、下

原文
瓠花深港見嬋娟
一扇相思両世縁
香燼芳空根不断
又抽柔蔓故纒綿

書き下し文
瓠花(こか) 深港(しんこう)に嬋娟(せんけん)を見(あら)わし
一扇 相い思う 両世(りょうせ)の縁
香燼(こうじん) 芳(かおり) 空(むな)しけれども 根(こん)断(た)えず
又た柔蔓(じゅうまん)を抽(ぬ)いて 故(ことさら) に(てんめん)たり

現代語訳‐本書より
みすぼらしい港の奥深くに咲く夕顔のあでやかな美しさに、光源氏は目を
とめられました。香をたきしめた白い扇がとりもつ縁で、夕顔の君と源氏は
二世の契りを結びます。香はもえつき、女君ははかなくなりましたが、
その命の根は断ち切れません。
また柔らかな蔓がのびてまといつくように、忘れがたみが源氏の前に現れて、
捨てがたい思いにさせるのでした。

現代語訳(意訳)
さびしい港町の奥深くに咲く夕顔のあでやかな美しさに、光源氏は目をとめられました。
一双の屏風のように相い思い、夕顔の君と源氏は二世の契りを結びます。
香はもえつき、女君ははかなくなりましたが、その情を断ち切ることはできません。
柔らかな蔓がまといつくように、玉鬘が源氏の前に現れて捨てがたい思いにさせるのでした。

瓠花-夕顔の花
玉鬘(たまかずら)-夕顔の忘れがたみ


posted by 成功の道しるべ at 02:00| 江馬細香

2024年11月09日

湘夢遺稿、下

細香女史の詩を読むと脳裏にその光景が浮かんで来る。
この詩は、在りし日の出会いを懐かしく思っている。

原文
当日相逢翰墨場
十年一夢鬢生霜
吟窓依旧炉煙静
展翫來詩親爇香

書き下し文
当日相い逢う翰墨場(かんぼくじょう)
十年一夢 鬢(びん) 霜(しも)を生ず
吟窓(ぎんそう) 旧に依りて 炉煙 静かなり
來詩(らいし)を展翫(てんがん)して 親しく香を爇(た)く

現代語訳
いつか詩文の会でお目にかかったことがございましたね。
あれから夢のような十年がすぎ、私の鬢に白髪がまじるようになりました。
けれども私の書物の窓辺は昔のままで、炉から煙が立ちどまります。
贈り下さったお作をくりかえし読み味わいながら、香をたいているのです。


参考
翰墨場
詩歌や書画をつくったり発表したりして楽しむ集まりの席。
また、その仲間。

細香は名古屋の書画会に度々出掛けている。
そんな折に出会ったのであろう。
posted by 成功の道しるべ at 07:23| 江馬細香

湘夢遺稿、下

久しぶりに湘夢遺稿から

原文
爺繙欧蘭書
児読唐宋句
分此一灯光
源流各自泝
児倦思栗芋
爺読不知体
堪キ精神不及爺
爺歳八十眼無霧

書き下し文
爺は繙く欧蘭の書
児は読む唐宋の句
此の一灯の光を分かちて
源流各々自ら泝る
爺は読みて休むことを知らず
児は倦みて栗芋を思う
愧ずるに堪う精神 爺に及ばず
爺は歳八十 眼に霧なし

現代語訳
父はオランダ語の書物をひもといて、私は四角い文字の唐詩、宋詩を読んでいます。
真ん中に置いた一つの灯火の光を分け合って蘭学と漢詩とそれぞれの源へとたどっています。
父は休むことなく書物に没頭し、娘はあきてしまってお芋や栗がほしくなりました。
何とはずかしいことでしょう、私の精神は遠く父に及びません。
父は八十をすぎましたが、その眼はくもりなく物事を見ています。


参考
爺-細香の父江馬蘭斎をさす。
唐宋句-唐詩、宋詩、漢詩の古典である。
posted by 成功の道しるべ at 07:11| 江馬細香
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