2025年12月11日

湘夢遺稿、下

原文
春意如泉沸不留
擬扶青帝領温柔
一連枝上寒暄異
落葉蕭蕭独占秋

書き下し文
春意 泉の如く 沸きて留まらず
青帝(せいてい)を扶(たす)けて 温柔(おんじゅう)を領(りょう)せんと擬(ほっ)す
一連の枝上(しじょう) 寒暄(かんけん) 異なり
落葉 蕭蕭(しょうしょう)として 独り秋を占む

現代語訳
女三宮のお顔をひと目見てから 柏木の恋ごころは泉のように湧き上がっておさえきれず
春の神さまを扶けて うら若い美女の部屋をわがものにしようといたします。
同じ木の枝の上(姉妹)でも、暖かさと寒さと異なる場所がありました。
柏木の妻二宮は夫に見すてられ、一人淋しく落葉の宮と呼ばれてお暮らしになります。

posted by 成功の道しるべ at 01:18| 江馬細香

2025年12月02日

湘夢遺稿、下

原文
自惜娉婷宜遠嫌
軽心何事露眉尖
一重花影毬場近
無類狸奴場繍簾

書き下し文
自ら惜しみて娉婷(ヘいてい) 宜しく嫌(けん)に遠ざかるべし
軽心 何事ぞ 眉尖(びせん)に露(あら)わす
一重(いちょう)の花影 毬場(きゅうじょう)に近し
無類の狸奴(りど) 繍簾(しゅうれん)を揚(あ)ぐ

現代語訳
美しい女人は自重して、奥深く人目をさけていらっしゃるべきでしたのに
軽はずみにも、そのお顔をあらわしておしまいになりました。
ひとえに咲いた花影のように、女参宮は若い公達の蹴まりの場の、すぐ近くに
お立ちになっていたのです。
いたずらものの、唐猫が走りでて、ぬいとりのある御簾をはねあげられました。

意訳
艶やかな女性は、慎み深く、人目をさけていらっしゃるべきでした。
ところがその場の雰囲気にのまれて思わず、そのお顔をあらわしてしまいました。
清らかに咲いた花影のように、女参宮は若い公達の蹴まりの場の、
すぐ近くにお立ちになっていたのです。
お茶目な唐猫が走りついでに、ぬいとりのある御簾をはねあげました。
posted by 成功の道しるべ at 18:18| 江馬細香

2025年12月01日

湘夢遺稿、下

原文
衆艶一時難併開
葵花忽被妒風摧
紅閨多少春宵夢
我愛空蝉蝉脱来

書き下し文
衆艶(しゅうえん) 一時に併せて開き難し
葵花(きか) 忽ち 妒風(とふう)を被(こうむ)りて摧(くだ)かる
紅閨(こうけい) 多少 春宵の夢
我は愛す 空蝉(うつせみ)の蝉脱(せんだつ)し来るを

現代語訳
光源氏のまわりで、多くの花々が時を同じくして咲くのは難しいことでした。
葵の花は別の花の嫉妬にあって、打ち砕けれておしまいになりました。
源氏に愛された女人達の閨では、どれだけ春の夜のはかない夢が
結ばれたことでしょう。
慎み賢明な空蝉が、薄衣を脱ぎ捨てて巧みに源氏の手から逃れたことを、
私は嬉しく思います。
posted by 成功の道しるべ at 10:30| 江馬細香
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