2026年01月15日

世説新語(朱百年家貧し)

書き下し文

朱百年(しゅひやくねん)家貧し。母冬月(とうげつ)を以て亡(ぼう)す。
衣、並(みな)絮(わた)無し。
百年此(こ)れより綿帛(めんぱく)を衣(き)ず。
甞(かつ)て寒時に孔思遠(こうしえん)に就きて宿す。
衣、悉(ことごと)く裌布(こうふ)なり。
酒を飮んで醉眠す。思遠臥具(がぐ)を以て之を覆ふ。
百年初め知らず。既に覺めて引き去り。思遠に謂(い)いて曰く、
綿は常に奇溫なりと。因(よ)りて涕(なみだ)を流して悲慟(ひどう)す。
思遠も亦た為に感泣(かんきゅう)しぬ。

現代語訳

朱百年は家が貧しかった。母は冬月に亡くなった。
衣にはどれも綿がない。竝びに絮無し。百年は綿の入った温かい
着物を着なかった。ある非常に寒いときに孔思遠のところに泊まった。
衣服はことごとく合わせである。酒を飮んで醉って寝てしまうと、孔思遠
が夜具をもって百年にかけてやった。
百年は最初こそ知らないが、やがて覚め思遠にいう。
綿というものは温かいものだなぁと。
こんな温かいものを着ずに死んだ母を思い涙を流して悲しく慟哭(どうこく)した。
思遠もまたそのために感極まって泣いた。

参考
朱百年-六朝宋の時代の隠士
孔思遠-宋の武帝の時の侍従武官
posted by 成功の道しるべ at 14:00| 世説新語
検索ボックス